更新日:2021-11-09
『相続した土地に根抵当権がついていた』
『亡くなった親の根抵当権を外すにはどうすればいい?』
『根抵当権付き不動産を相続したけど、どうすればいいのかわからない』
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、司法書士の樋口です。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、相続、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。
今回は、根抵当権がついている不動産の相続について、そもそも根抵当権とは何かというところから、必要な登記手続きについて解説しています。
この記事で分かること
そもそも根抵当権とは?
根抵当権とは、「設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するため」の抵当権と規定されます(民法398条第2項)。
わかりづらい表現ですが、まずは抵当権とは何かというところから見ていきましょう。
抵当権は、金融機関がお金を貸したりする際に、債権回収のために不動産を担保に取る手法の一つです。
抵当権を登記するための手続きを抵当権設定登記といい、金融機関は、この登記を申請することを条件に融資を行います。
貸したお金が返済されない場合には、金融機関は担保に取った不動産を競売にかけ、競売代金の中から優先的に配当を受けることができます。
抵当権には「普通抵当権」と「根抵当権」の2種類がありますが、一般に「抵当権」というときには、前者を指すことが多いです。
本稿でも、普通抵当権を「抵当権」と表記して解説をしていきます。
抵当権は、すでに発生している特定の債権を担保します。
下の例では、甲がAに対して3,000万円の融資を行っており、この貸金債権を担保するため、不動産に抵当権が設定されています。
Aが返済を終え、担保していた甲A間の債権がなくなると、抵当権も消滅します。
このように、抵当権は担保している債権とセットになっているため、甲がAに再度お金を貸す場合でも、先に設定された抵当権を流用することはできません。
①で設定された抵当権については抹消登記手続きを行ったうえで、改めて抵当権設定登記の申請を行う必要があります。
マイホームの購入時に住宅ローンを利用する際には、この抵当権が設定されることが多いです。
住宅ローンは融資の回数が少なく、返済と借入れを複数回行うということは、通常は予定されていないためです。
一方、企業が事業を営む場合には、取引先の金融機関から何度も融資を受けることも少なくありません。
このような取引で、返済をしたら抵当権抹消登記手続きをし、借入れをしたら抵当権設定登記手続きをする、ということを繰り返すのは非常に煩雑ですし、費用もかかってしまいます。
こうした事情に対応するために考え出されたのが根抵当権で、古くから実務では利用されていましたが、正式に法律上の権利として定められたのは昭和47年4月1日のことです。
なお、昭和47年4月1日より前に設定契約がされた根抵当権(いわゆる旧根抵当権)については、現在とは異なる取扱がされることがありますが、本稿では扱いません。
根抵当権は、当事者間の継続的な取引関係を基礎とし、そこから発生する債権を、契約で取り決めた限度額(極度額)の範囲内で担保します。
下の例では、甲A間の取引から生じる債権を担保するために、極度額4,000万円の根抵当権が設定されています。
甲がAに対して3,000万円の貸し付けを行うと、この貸付債権が根抵当権によって担保されます。
借りたお金をAが完済すると債権は消滅しますが、根抵当権自体はなくなりません。
後日、Aが甲から2,000万円の融資を受けたときは、既に設定されている根抵当権によって、甲の債権が担保されます。
根抵当権は、抵当権と同じように、複数の不動産を担保に取ったり、権利を他の人と共有したりすることができます。
さらに、抵当権とは異なり、特定の債権との結びつきがありませんので、別々の債務者に対する複数の債権を同時に担保することもできます。
元本確定前の根抵当権の性質
根抵当権は流動的に発生・消滅する不特定の債権を担保し、個々の債権の移転や消滅により影響を受けることはありません。
例えば、甲がAに対して3,000万円の債権を持っており、これを乙に譲渡したとします。
抵当権の場合には、担保している債権の譲渡に伴い当然に乙に移転しますので、乙A間で抵当権設定契約を交わす必要はありません。
Aの返済が滞ったときは、乙が競売を申し立て、債権の回収を図ることができます。
他方、根抵当権の場合には、甲A間の取引から発生する債権を担保するという点は変わらず、3,000万円の貸付債権だけが乙に移転します。
乙は無担保の債権を譲り受けることになりますので、不動産を担保に取りたい場合には、 Aとの間で新たに(根)抵当権の設定契約を交わす必要があります。
元本確定後の根抵当権の性質
担保する債権が流動的であるという点が根抵当権の最大の特色ですが、元本が確定すると、それ以降に発生する債権は担保されなくなります。
元本確定後の根抵当権は、抵当権と同じように考えることができます。
そのため、債権が譲渡されれば根抵当権も一緒に移転しますし、返済されれば消滅します。
元本確定事由
これまで解説したように、元本確定の前後によって根抵当権の性質は大きく異なり、行うことのできる手続きも変わってきます。
元本の確定後にのみすることのできる処分は、「元本確定登記」がされたあとでなければ、登記手続きをすることができません。
ただし、元本が確定したことが登記簿の記載から明らかになる場合には、元本確定登記をしなくても、手続きをすることができます。
元本確定前にのみできる処分 | 根抵当権の全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡 債権の範囲の変更 債務者の変更(*の場合を除く) 元本確定期日の変更 |
元本確定後にのみできる処分 | 根抵当権の譲渡・放棄 根抵当権の順位の譲渡・放棄 弁済を原因とする根抵当権抹消 債権譲渡を原因とする根抵当権移転 債務引受・債務者更改を理由とする債務者変更(*) |
元本確定に関わらずできる処分 | 転抵当 根抵当権の順位変更 極度額の変更 解除・解約を原因とする根抵当権抹消 |
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そのため、根抵当権が設定されている場合には、その元本が確定しているかどうかの判断が重要になってきます。
元本は、当事者の合意によるほか、次のような事情によっても確定します。
元本確定事由 | 元本が確定するとき | 元本確定登記の要否 | |
㋐ | 元本確定期日が到来した | 元本確定期日 | 不要 |
㋑ | 設定者が元本確定請求をした(※1) | 請求時から2週間が経過したとき | 必要 |
㋒ | 根抵当権者が元本確定請求をした | 請求時 | 必要 |
㋓ | 根抵当権者が根抵当権を実行した(※2) | 申立ての日 | 不要 |
㋔ | 根抵当権者が滞納処分による差押えを行った | 滞納処分がされた日 | 不要 |
㋕ | 第三者が競売手続きを行った(※3) | 根抵当権者が、競売手続の開始 または 滞納処分による差押えがあったことを知った時から2週間を経過したとき |
必要 |
㋗ | 根抵当権者または債務者の相続開始後、 6か月以内に所定の登記手続きがされなかった |
相続開始時 | ※4 |
㋘ | 合併を理由に確定請求した | 合併の日 | 必要 |
㋙ | 会社分割を理由に確定請求した | 会社分割の日 | 必要 |
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※1 根抵当権の設定時から3年を経過していない場合は、請求できない
※2 手続きの開始または差押えがされなかったときは、確定しない
※3 競売手続・差押え・破産手続開始決定が効力を失ったときは、原則として元本は確定しなかったものとみなされる
※4 相続による債務者の変更の登記がされているが、その後に合意の登記がされていない場合は、元本確定登記は不要
上の表のに挙げた事由のうち、相続との関係では㋗が問題になります。
次項以下で詳しく説明します。
根抵当権のついた不動産を相続した場合の登記一覧
根抵当権の設定者と債務者が同じ場合、その人は次の3つの立場を併せ持っています。
①不動産の所有者
②根抵当権が担保する、個々の債権の債務者
③根抵当権の基礎となる取引の当事者
そこで、根抵当権がついている不動産の相続も、3つの場面分けて考える必要があります。
立場 | 登記手続き |
①不動産の所有者 | 相続・遺贈を原因とする所有権移転登記 |
②根抵当権が担保している、個々の債権の債務者 | 相続による債務者変更登記 債務引受による債務者変更登記 |
③根抵当権の基礎となる取引の当事者 | 指定債務者の合意の登記 債務者及び債権の範囲の変更登記 |
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次の事例をもとに、それぞれの場面について見ていきましょう。
【事例1】
自営業を営んでいるAは、甲銀行から融資を受けており、A所有の店舗兼自宅には次の内容の根抵当権が設定されている。
・極度額 1億円
・債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権 電子記録債権
・債務者 A
その後、令和2年3月26日にAが死亡した。
Aの相続人はBCDの3名で、不動産と事業をBに引き継がせたいと考えている。
死亡した時点で、Aは甲に対し3,000万円の残債務を負っていた。
相続による所有権移転登記
根抵当権の設定者(不動産の所有者)が死亡した場合には、所有権の登記名義人を、被相続人から相続人へと変更する必要があります。
Aが遺言書を残していた場合には、基本的にはその内容に従って財産を承継します。
関連記事:遺言書がある場合の相続登記について|必要書類や遺言執行者がいる場合は?
遺言書がない場合には、法定相続人であるBCD全員で話し合い、遺産をどのように分けるかを決めます。
この話し合いのことを遺産分割協議といい、合意がまとまったら、遺産分割協議書という書面を作成します。
合意自体は口頭でも有効に成立するのですが、その内容を書面で残しておいたほうが、のちに争いが起こるのを防ぐことができるためです。
また、法務局に登記を申請する際には、遺産分割協議書を添付する必要があります。
遺産分割が成立すると、被相続人の死亡時にさかのぼって効力が生じますので、この不動産については、相続人は当初からB一人だったことになります。
そのため、AからBへ、相続を原因として直接に所有権移転登記の手続きを行うことができます。
関連記事:やり直し出来る?遺産分割による相続登記(不動産の名義変更)について解説
【登記の費用】
登録免許税 | (固定資産評価額)×(0.4%) |
司法書士の報酬相場 | 5万円~15万円 |
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相続登記について詳しく知りたい方は『相続登記とは?亡くなった人の不動産の名義変更について法改正点も含め解説』をご覧ください。
債務引受による債務者変更登記
法定相続
被相続人の遺産には、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金や債務といったマイナスの財産が含まれていることもあります。
被相続人が亡くなった時点で負担していた金銭債務については、法定相続分に応じて分割され、各相続人が引き継ぐことになります。
事例の場合、Aの死亡時に存在する3,000万円の債務はBCDに承継され、甲は各人に対し、それぞれ1,000万円の支払いを求めることができます。
この債務は法律上当然に承継されるものですので、遺産分割協議の対象とはなりません。
そのため、BCDの間で、Bのみが債務を引き継ぐという合意が成立したとしても、遺産分割としては何の効力もありません。
登記としては、根抵当権の債務者を、AからBCDへ、相続を原因として変更する手続きが必要になります。
【登記の費用】
登録免許税 | (1,000円)×(不動産の個数) |
司法書士の報酬相場 | 3万円~10万円 |
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免責的債務引受or併存的債務引受(重畳的債務引受)
遺産分割としての効力はありませんが、Bのみが債務を引き継ぐという合意をすること自体は可能です。
この合意は、CDがAから承継した債務を、さらにBが引き受けるという免責的債務引受の取り決めだと考えられます。
ただし、債権者甲に対して債務引受の効力を主張するためには、甲の同意を得る必要があります。
仮に債務を引き受けるBに資力がなかった場合には、貸金の回収ができなくなるというリスクが生じるためです。
①根抵当権は、甲A間の取引から生じたAの債務を担保している状態です。
②Aの死亡により、Aが負っていた3,000万円の残債務は、法定相続人BCD全員に引き継がれます。
③BCDの間で、CDの債務をBが引き受けるという債務引受の合意がされました。
④甲の同意が得られた場合には、相続開始時にAが負っていた債務は、結果としてBがすべて負担することになります。
【登記の費用】
登録免許税 | (1,000円)×(不動産の個数) |
司法書士の報酬相場 | 3万円~10万円 |
(スマホでは右にスクロールできます)
なお、②の登記がされてから6か月以内に債務引受による債務者変更登記手続き(③④)をしたい場合には、前提として、元本確定の登記を申請する必要があります。
指定債務者の合意の登記
元本の確定前に相続が発生した場合には、根抵当権の基礎となっている取引関係をどのように処理するかという問題が生じます。
この取引は、根抵当権者と債務者との人的な関係に基づいていることも多いため、当然に相続人に承継されるとするのは妥当ではありません。
他方で、BがAの事業を引き継ぎ、甲との取引を継続することも考えられます。
この場合には、甲B間で新たに設定契約をするより、元本を確定させず、甲A間の根抵当権をそのまま利用したほうが、手間も費用も節約できます。
そこで民法は、所定の期間内に一定の登記手続きを行った場合には、根抵当権の元本は確定しないと定めています。
具体的には、債務者の相続開始後6か月以内に、次の登記を申請する必要があります。
Ⓐ相続による債務者の変更登記
Ⓑ指定債務者の合意の登記
指定債務者とは、根抵当権の基礎となっている取引を引き継ぐ相続人のことで、設定者(事例ではB)と根抵当権者(甲)との合意によって決めることができます。
ⒶⒷの登記手続きがされた場合には、根抵当権は次の債務を担保することになります。
・相続の開始時に存在するAの債務(3,000万円)
・Aの相続開始後に、甲B間の取引により、Bが甲に対して負担する債務
一方、6か月以内にⒶⒷの登記手続きがされなかったときは、根抵当権の元本はAの相続開始時に確定したものとみなされます。
この場合には、根抵当権は、相続の開始時に存在するAの債務(3,000万円)のみを担保します。
①根抵当権は、甲A間の取引から生じたAの債務を担保している状態です。
②Aの死亡により、Aが負っていた3,000万円の残債務は、法定相続人BCD全員に引き継がれます。
③甲B間で、Bを指定債務者とする合意がされます。
指定債務者がBとされた場合には、BCDが承継したAの債務についても、Bのみが負担するという免責的債務引受の合意がされることが多いと思われます。
CDから引き受けた債務は、Aから承継した債務そのものではなく、免責的債務引受という新たな行為によって生じたものですので、根抵当権による担保の対象から外れます。
④この債務を根抵当権によって担保させるためには、指定債務者の合意の登記のあとに、 さらに変更登記を申請する必要があります。
まず、被担保債権の範囲に、㋑CDがAから相続し、Bが免責的に引き受けた債務を追加します。
これを記載すると、㋐BがAから承継した債務が根抵当権で担保されなくなるのではないかというおそれがあるため、こちらも債権の範囲に含めます。
結果として、根抵当権は、㋐㋑の特定債務と、㋒甲B間の取引から生じる不特定の債務とを担保することになります。
【登記の費用】
登録免許税 | (1,000円)×(不動産の個数) |
司法書士の報酬相場 | 3万円~10万円 |
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根抵当権の抹消
元本確定前の根抵当権は、担保している個々の債権が返済などで消滅しても、効力に影響はありません。
一方、元本確定後の根抵当権は、普通抵当権と同じように考えることができますので、債務が返済されたときは、これに伴って消滅します。
これ以外に、根抵当権者と設定者の合意などにより、根抵当権自体を消滅させることもできます。
根抵当権の抹消原因としては、解除、解約、放棄、弁済などがあります。
【登記の費用】
登録免許税 | (1,000円)×(不動産の個数) ※不動産が20個以上の場合には、2万円 |
司法書士の報酬相場 | 1万円~3万円 |
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債務者の一人が死亡した場合
6か月経過前
【事例2】
AはBと一緒に自営業を営んでいる。
AとBはともに甲銀行から融資を受けており、A所有の店舗兼自宅には次の内容の根抵当権が設定されている。
・極度額 1億円
・債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権 電子記録債権
・債務者 A B
その後、令和2年3月26日にAが死亡した。
Aの相続人はCDEの3名で、CがBとともに事業を行っていくことになった。
死亡した時点で、Aは甲に対し3,000万円の残債務を負っていた。
共用根抵当権の場合、一人の債務者に生じた事情は、他の債務者には影響しないのが原則です。
そのため、債務者の一人が死亡しても、他の債務者について元本確定事由がないのであれば、根抵当権は全体としては確定しません。
①根抵当権は、甲A間の取引から生じる債務と、甲B間の取引から生じる債務とを担保している状態です。
②Aの死亡により、Aが負っていた3,000万円の残債務は、法定相続人CDE全員に引き継がれます。
③甲C間でCを指定債務者とする合意が、CDE間でDEの債務をCが免責的に引き受けるという取り決めがされました。
免責的債務引受により、DEがAから承継した債務は根抵当権では担保されなくなります。
④この債務を根抵当権によって担保させるため、指定債務者の合意の登記のあとに、 さらに変更登記を申請します。
被担保債権の範囲に、㋑DEがAから相続し、Cが免責的に引き受けた債務と、㋐CがAから承継した債務を追加します。
結果として、根抵当権は、次の債務を担保することになります。
・債務者Cについては、㋐㋑の特定債務と、㋒甲C間の取引から生じる不特定の債務
・債務者Bについては、㋓甲B間の取引から生じる不特定の債務
6か月経過後
【事例2】
AはBと一緒に自営業を営んでいる。
AとBはともに甲銀行から融資を受けており、A所有の店舗兼自宅には次の内容の根抵当権が設定されている。
・極度額 1億円
・債権の範囲 銀行取引 手形債権 小切手債権 電子記録債権
・債務者 A B
その後、令和2年3月26日にAが死亡した。
令和3年11月1日の時点で、指定債務者の合意の登記はなされていない。
Aの相続人はBCDの3名で、Bは引き続き事業を行っていくことになった。
死亡した時点で、Aは甲に対し3,000万円の残債務を負っていた。
①根抵当権は、甲A間の取引から生じる債務と、甲B間の取引から生じる債務とを担保している状態です。
②Aの死亡により、Aが負っていた3,000万円の残債務は、法定相続人BCD全員に引き継がれます。
③BCD間でCDの債務をBが免責的に引き受けるという合意がされました。
免責的債務引受により、CDがAから承継した債務は根抵当権では担保されなくなります。
④ この債務を根抵当権によって担保させるため、変更登記を申請します。
被担保債権の範囲に、㋑CDがAから相続し、Bが免責的に引き受けた債務と、㋐BがAから承継した債務を追加します。
結果として、根抵当権は、㋐㋑の特定債務と、㋒甲B間の取引から生じる不特定の債務を担保することになります。
債務者が法人の場合
根抵当権は事業用の融資を受ける場合によく用いられるため、債務者が会社(法人)であることも少なくありません。
よく見られるのは、会社の代表者が個人で所有している不動産に対して、会社を債務者とする根抵当権が設定される、というケースです。
この例で代表者が亡くなった場合には、まず、所有権の登記名義人を、代表者からその相続人へと変更します。
代表者が死亡しても会社はなくなりませんので、根抵当権の債務者については、登記手続きをする必要はありません。
ただし、登記簿には、不動産に関する記録がされる不動産登記簿のほかに、商業登記簿というものもあります。
商業登記簿には会社の代表者の住所や氏名が記録されていますので、こちらの変更手続きは必要です。
実務上も、登記手続きを行うことが、金融機関が取引を続ける条件の一つとなります。
この記事の執筆者
-
東京司法書士会所属 登録番号7208号
東京都行政書士会所属 登録番号第19082417号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、遺産相続、不動産登記手続き、不動産に関する紛争の解決(立ち退き、賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。
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