更新日:2022-11-12
『初めての相続で何から手をつけていいかわからない』
『専門家に依頼するか自分で手続きするか悩んでいる』
この記事はそのような方向けに書いています。
こんにちは、司法書士の樋口です。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、相続、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。
亡くなった人が不動産や現金、預貯金や株式等、遺産を遺して亡くなった場合には、原則として遺産相続の手続きが必要です。
遺産相続の手続きの中には、期限があるものもありますので注意が必要です。
特に、家庭裁判所への相続放棄の手続き前に、遺産を処分してしまうと相続放棄が出来なくなってしまうので、相続が発生したら早めに手続きを進めましょう。
この記事では、遺産相続の概要、具体的な流れから誰に依頼するか、自分で手続き出来るのか等、図解を交えてわかりやすく解説しています。
大切な人を亡くした方の参考になるかと思いますので、よろしければ最後までご覧ください。
遺産相続とは
遺産相続とは、亡くなった人が持っていた財産上の権利義務を、その家族や親族に引き継がせる制度のことをいいます。
家族や親族は、死亡の事実を知っていたかどうかにかかわらず、法律上当然に、故人が亡くなったときから権利義務を承継します。
このことを「相続が発生した」「相続があった」「相続が開始した」などと表現します。
また、亡くなった人を「被相続人」、被相続人と一定の身分関係にある人を「相続人」、財産上の権利義務を「遺産」「相続財産」と呼んでいます。
なお、「遺産相続」という制度は戦前からありましたが、この時代の遺産相続は、現在のものとは少し違います。
本稿では、現行法を前提に、相続人が遺産を取得する場合の手続きについて解説をしていきたいと思います。
遺産相続の対象となる財産
相続人は、基本的には、被相続人が持っていた財産に関するすべての権利義務を、そのまま承継します。
「権利義務」ですので、一般的に利益になる遺産(プラスの財産)だけでなく、不利益になる遺産(マイナスの財産)も受け継ぐことになります。
ただし、他の人が行使・負担することが適切でない権利義務や、被相続人の死亡によって初めて発生するものなどは、相続財産にはなりません。
(財産の例)
遺産を相続するにあたってかかる税金
上の図の「遺産に含まれない財産」であっても、相続税に関しては課税対象になる場合があります。
相続税は、遺産の評価額が基礎控除の金額よりも多い場合に課税される税金です。
相続税のほかに、相続時に支払う可能性がある税金としては、登録免許税、固定資産税、譲渡所得税などがあります。
税金の種類 | 課税されうる場面 |
相続税 | 一定の金額以上の遺産を取得した |
登録免許税 | 相続登記を申請した |
固定資産税 | 不動産を取得し、保有している |
譲渡所得税 | 相続財産の売却や換価分割で利益が生じた |
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遺産相続の流れ
身近な人が亡くなった後に行う手続きには、様々なものがあります。
このうち、遺産の承継という点から見ると、その中心となるのは、上の図の「名義変更・解約など」の部分です。
遺産は相続の発生と同時に相続人へと引き継がれますが、実際にその財産を利用するためには、名義変更、解約、換価、財産の分配などの手続きを経る必要があります。
例えば、不動産を取得したとしても、名義を変更する登記を法務局に申請しなければ、自分が権利者であると主張することができません。
被相続人の口座は死亡によって凍結されますので、そこに入っているお金を使いたい場合には、銀行で相続手続きを行って払戻しをしてもらいます。
不動産など分配しづらい遺産については、それ自体を承継するのではなく、売却して現金に換え、その金銭を相続人が取得するという方法をとることも少なくありません。
相続の開始から遺産の取得までの流れを大まかに図にすると、次のようになります。
法務局や銀行で手続きを行うためには、誰がどの遺産を取得するかについて、すべての相続人の間で合意(遺産分割)が成立していなければなりません。
遺産分割を行うためには、相続財産や相続人が判明していなければなりませんので、これらの調査も必要になります。
次の章では、各段階の手続きについて、もう少し詳しく見ていきます。
被相続人の死亡(相続の開始)
相続は人の死亡によってのみ発生し、それ以外の原因で始まることはありません。
死亡には①自然死亡と②法的な死亡とがありますが、「人が亡くなった」というときは①を指すことがほとんどですので、本稿でもこれを前提に話を進めていきます。
①自然死亡 | 老衰、病気、事故など、生物学的に死亡したと判断される場合 |
②失踪宣告 | 一定期間、生死不明の人がいる場合に、裁判所の宣告によって、法律的に死亡したものと扱われる場合 |
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人が亡くなると、死亡を確認した医師が死亡診断書を作成してくれますので、これを持って市区町村役場に行き、死亡届を提出します。
死亡届の提出期限は、被相続人の死亡を知った日から7日以内です。
遺言書の有無の確認
被相続人が遺言書を作成し、どの財産を誰に取得させるかを指示している場合には、相続人・遺産の調査や遺産分割の手続きが不要になることが多いです。
また、相続人ではない人に対して遺産を譲るという遺言があるケースもあります。
この場合、相手方が遺産を受け取る権利を放棄しない限りは、相続人全員で協議をしても、遺産分割は無効になってしまいます。
そのため、遺言書があるかどうか、早い段階で確認しておくことが大切になります。
遺言書にはいくつか種類がありますが、よく利用されているのは、①被相続人が自分で作成する自筆証書遺言と、②公証人が作成する公正証書遺言の2つです。
法定相続人の調査
名義変更などの手続きの際には、遺産を取得する人が相続人であることや、遺産分割に相続人全員が関与していることの証明が求められます。
身近な家族や親族の方にとっては、相続関係は自明のことかもしれませんが、役所や金融機関に対しては、客観的な資料として戸籍を提出します。
戸籍には、出生、死亡、婚姻、離婚、養子縁組、離縁などの履歴が記載されていますので、これによって相続人であることなどを証明できます。
また、相続関係が不明な場合でも、戸籍を一つ一つ集めていくことで、誰が相続人であるかを調べることが可能です。
一般的に、相続手続では次の戸籍が必要になります。
- 被相続人:出生から死亡まで、すべての戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
- 相続人:現在の戸籍謄本(抄本)
結婚や転籍などで本籍地が変わっていることが多いですので、出生から死亡まで集めると、少ない方でも3~4通は取得することになります。
遺産の調査
遺産の内容が明らかにならなければ、遺産分割をすることも、相続放棄や相続税申告の要否を判断することもできません。
しかし、親しい関係の方であっても、故人の全財産を把握するというのは簡単なことではありません。
被相続人とあまり交流がなかったり、何代にもわたって相続が発生していたりすると、遺産の調査はさらに難しくなります。
どのような遺産があるかがわからない場合には、被相続人の自宅にある書類や郵便物を確認する、関係機関への照会を行うなどの方法で、手がかりを探していきます。
(遺産の調査方法の例)
単純承認・限定承認・相続放棄
遺産を調べた結果、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが多かったときは、相続放棄を検討することも考えられます。
相続財産は、被相続人の死亡と同時に相続人へと引き継がれますが、一方で相続人は、遺産をどのように承継するかを選ぶことができます。
選択肢としては、単純承認、限定承認、相続放棄の3つがあります。
限定承認は、調査をしても遺産の内容が判明しなかったときに便利な方法ですが、手続きに手間や時間がかかるため、あまり利用されていません。
相続放棄をすると、その人については初めから相続人ではなかったという扱いになり、その後の遺産分割協議に参加する必要もなくなります。
一定の期間内に相続放棄も限定承認もしなかった場合には、単純承認をしたものとみなされます。
準確定申告
被相続人に一定の収入があった場合などには、相続人が故人の代わりに確定申告(準確定申告)をしなければなりません。
通常の確定申告では、毎年1月1日から12月31日までの所得をもとに税額を計算し、その申告・納税を翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。
これに対し、準確定申告の場合には、亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得から税額を算出し、被相続人の死亡を知った日の翌日から4か月以内に申告と納税をします。
遺産分割協議
複数の相続人がいる場合には、遺産はその全員の共有財産として扱われます。
この共有関係を解消し、誰がどの財産を取得するかを具体的に確定させるための手続きが、遺産分割です。
遺産分割には、①指定分割、②遺産分割協議、③遺産分割調停、④遺産分割審判の4つがあります。
①指定分割 | 被相続人が遺言書の中で決める |
②遺産分割協議 | 相続人の間で話し合って決める |
③遺産分割調停 | 裁判所の関与のもと、相続人が話し合って決める |
④遺産分割審判 | 裁判所が決める |
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遺言書がない場合や、遺言書の内容とは違う分け方をしたい場合には、まずは②の遺産分割協議が行われるのが一般的です。
話合いをしても合意が成立しないときや、協議自体ができないときには、③調停や④審判の手続きに移行します。
具体的な遺産の分け方については、現物分割、代償分割、換価分割などの方法があります。
協議自体は口約束でも有効に成立しますが、合意の内容を明確にし、後日の争いを防ぐため、合意内容を記載した書類(遺産分割協議書)を作成することが一般的です。
また、役所や銀行での相続手続きの際には、原則として遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書の提出が必要になります。
遺産の名義変更・分配
遺産分割が終わったら、その内容に従って名義変更や解約などの手続きを行います。
役所や金融機関に対しては所定の書類を提出しますが、具体的に何が必要かは、誰が財産を取得するか、誰が手続きをするかなどによって変わってきます。
主な提出書類としては、次のものが挙げられます。
- 被相続人の戸籍(出生から死亡まで、すべてのもの)
- 相続人全員の戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書、遺言書
不動産の相続手続き
まずは相続を原因として所有権移転登記(相続登記)を申請し、登記の名義を相続人へと変更します。
関連記事:相続登記とは?亡くなった人の不動産の名義変更について法改正点も含め解説
代償分割や換価分割のために不動産を売却する場合でも、被相続人から買主へそのまま名義を移すことはできません。
いったん相続登記を申請したうえで、新しく名義を取得した相続人から買主に対し、売買による所有権移転登記を申請する必要があります。
預貯金の相続手続き
預貯金の承継手続きとしては、被相続人の口座を解約し、預けている金銭の払戻しを受けることが多いです。
故人が事業を営んでおり、銀行との取引を続けたい場合などには、被相続人から相続人へと、口座の名義を変更することもあります。
株式・投資信託の相続手続き
被相続人の口座そのものの名義変更をすることはできず、相続人の口座へ証券を移動させる(移管する)方法で承継させます。
そのため、相続人がその証券会社に口座を持っていない場合には、移管の前提として、相続人名義で口座を開設する必要があります。
証券を売却して換金する場合でも、預貯金とは違い、被相続人名義の口座を解約して払戻しをしてもらうことはできません。
いったん相続人名義の口座に移管し、その後に売却・換金するという流れになります。
なお、司法書士などの専門家が代理人として手続きを行う場合には、司法書士(事務所)名義で口座を開設し、移管してもらうこともできます。
相続税の申告
遺産の総額が基礎控除額以下になる場合には、相続税は課税されませんので、税務署に申告する必要もありません。
基礎控除額を超える場合でも、税務上の特例(配偶者控除、小規模宅地の評価減)の適用を受けることにより、相続税がかからなくなるケースもあります。
この場合には、納税は不要ですが、税務署への申告自体を省略することはできません。
遺産相続の手続きに期限はある?
死亡後の手続きの中には、法律で期限が決められているものがあります。
例えば、相続放棄や相続税の申告など、裁判所や役所への届出・申告に関しては、一定の期間内に行わなければならないことが多いです。
一方、相続人や相続財産の調査、遺産分割、名義変更は、その手続き自体には期限は設けられていません。
ただし、相続放棄をするかを決めるためには遺産の内容を把握する必要がありますし、相続税の申告は原則として遺産分割が終わっていることが条件になります。
期限がないからといって後回しにすると、他の手続きが間に合わなくなってしまう可能性もありますので、早めに着手されることをおすすめします。
相続放棄、準確定申告、相続登記、相続税の申告の原則的な期限は、次のとおりです。
相続放棄
「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人が亡くなり、それによって自分が相続人となったことを知ったときです。
通常は、被相続人が死亡した日になると思われます。
ただし、相続関係が複雑であったり、被相続人と疎遠になっていたりして、相続があったことがすぐにはわからない場合もあります。
このようなときには、実際に自分が相続人であると認識した日(または通常であれば認識できた日)から3か月が期限になります。
準確定申告
相続登記
本稿執筆時点では、相続登記を申請するかどうかは相続人の判断に任されており、期限も定められていません。
ただし、令和6年(2024年)4月1日からは、一定の期間内に相続登記を申請することが義務づけられます。
令和6年4月1日以降に相続が発生した場合だけでなく、令和6年3月31日以前に亡くなった人の手続きについても、義務化の対象となります。
関連記事:相続登記が義務化|義務化された背景やその他の改正についても解説
相続税の申告
申告だけでなく、納税も10か月以内に行う必要があります。
相続の順位と割合
遺産分割にはすべての相続人が関与する必要がありますが、家族や親族のうち、どの人が相続人となるか(法定相続人)は、法律で決められています。
また、それぞれの相続人が取得する遺産の割合も規定されていますが(法定相続分)、必ずそのとおりに分割しなければならないというものではありません。
相続に関しては何度か法改正が行われており、被相続人が亡くなった時点で運用されていた規定が適用されます。
平成13年7月1日以降に相続が発生した場合の、法定相続人と原則的な法定相続分は、次のとおりです。
遺産を兄弟姉妹が相続する場合
近年、未婚率や離婚率が上昇しており、また、子を持たない人も多くなっています。
それに伴い、今後は、子も存命の直系尊属もおらず、兄弟姉妹が相続人になるというケースも増えてくると思われます。
兄弟姉妹が承継する場合、被相続人と年齢が近いため、相続人となるべき人がすでに亡くなっていることも少なくありません。
調査する戸籍の数も多くなるため、子や直系尊属が相続する場合に比べ、手続きが複雑になる傾向があります。
遺産を孫が相続する場合
被相続人に子がいる場合には、子が相続人になりますので、孫が遺産を相続することはありません。
ただし、数次相続や代襲相続の場合には、相続財産が孫に承継されることもあります。
数次相続とは、ある人(下の図のA)が亡くなったあと、相続の手続きをしないうちに相続人(C)も死亡し、複数回の相続が発生している状態を指します。
代襲相続は、相続人となるはずであった人(C)が、被相続人(A)よりも先に死亡したときなどに、その人(C)の相続人(G、H)が代わりに承継することをいいます。
子(D)は健在だが遺産は孫(I)に引き継がせたいというときには、いったんDの名義にしてから、贈与や売買でIへ移転することになります。
なお、Dが相続放棄をした場合には、Aの相続人はBCEのみという状態になりますので、Iが代襲相続人となることはありません。
遺産を放棄するには?
法定相続人になったとしても、実際に遺産を取得するかどうかは、各相続人が自由に決めることができます。
被相続人と疎遠であった、遺産を承継しても利用する機会がないなどの理由から、財産の取得を希望しないという方もいらっしゃるかもしれません。
遺産を取得しない方法としては、先に説明した相続放棄のほかに、遺産分割や相続分の譲渡などが挙げられます。
家庭裁判所に対し相続放棄の申立て
相続放棄をした人は、相続が開始した当初から相続人ではなかったものとして扱われます。
そのため、被相続人に借金があり、債権者から支払うよう求められたとしても、これに応じる必要はありません。
ただし、遺産を処分するなど一定の行為をした場合には、相続放棄をしたあとであっても、単純承認をしたとみなされます。
例えば、相続財産である金銭を私的に使ったり、遺産分割協議に参加したりすると、遺産の処分をしたと判断される可能性があります。
遺産分割協議により遺産を取得しない旨の合意
相続放棄をすると一切の財産を引き継げなくなりますので、特定の遺産のみを取得したい(取得したくない)というときには、遺産分割で対応する方法が考えられます。
ただし、債務については、単純承認をした相続人が各人の相続分に応じて引き継ぐとされています。
遺産分割協議によって特定の人のみが債務を承継するという合意をすることもできますが、これを債権者との関係でも有効にするためには、債権者の承諾を得る必要があります。
相続分の譲渡により相続関係から離脱
相続人たる地位を他の相続人や第三者に渡すことを、相続分の譲渡といいます。
遺産共有状態における割合的な持分を移転させるものですので、遺産分割前のみ、譲渡をすることができます。
相続分の全部を譲渡した場合には、その人は相続人の地位から外れますので、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。
ただし、債務については、遺産分割の場合と同じく、譲渡の当事者間では有効ですが、債権者との関係では、その承諾を得なければ債務から逃れることはできません。
遺産相続の手続きは誰に頼む?
遺産相続に関する手続きには様々なものがありますので、どのようなことを頼みたいかによって、依頼すべき専門家も変わってきます。
専門家 | 対応できる手続き |
弁護士 | 相続手続き全般 相続人間でもめている場合でも対応できる |
司法書士 | 基本的には相続手続き全般 相続人間でもめている場合は対応できない |
税理士 | 確定申告、相続税申告、譲渡所得税の申告など、税金関係の手続き |
行政書士 | 自動車の所有者変更など、行政関係の手続き |
社会保険労務士 | 年金受給者死亡届、遺族年金の給付請求など、社会保険関係の手続き |
※弁護士以外は、各専門家の専門分野に関しては対応できない
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弁護士と司法書士の最も大きな違いは、相続人の間で争いがある場合に、手続きの依頼を受けることができるかどうかです。
例えば、司法書士は、遺産分割協議の段階では、法律的な情報を提供したりアドバイスをしたりして、合意の成立に向けての支援をすることができます。
しかし、意見の対立がある場合に、特定の人の代理人として他の相続人に働きかけ、合意するよう求める交渉を行うことはできません。
また、司法書士は、遺産分割調停や審判の申立書を作成することはできますが、その後の裁判所での手続きについて代理人になることはできません。
遺産分割の話し合いが済んでいる場合
すでに遺産分割が終わっている場合には、弁護士と司法書士、どちらに依頼しても問題ありません。
話合いは済んでいるが遺産分割協議書を作っていないという場合でも、必要な書類の収集・作成、名義変更などの手続きをすべて任せることができます。
なお、手続きにかかる費用は事務所によって異なりますが、一般的には、司法書士のほうが、弁護士よりも報酬が低い傾向にあります。
トラブルはないが相続人間が疎遠な場合
何代にもわたって相続が発生しており、相続人同士の面識がなかったり、互いに連絡先を知らなかったりするケースもあります。
このような場合には、例えば、連絡を取りたい相続人に対して手紙を送るという方法が考えられます。
司法書士が手紙の送付に関与する場合には、特定の相続人の代理人として交渉をすることはできませんので、公平な第三者としての立場で支援することになります。
手紙を発送する段階では、先方の意向がわからないため、その相続人の対応次第では、争いに発展してしまう可能性もあります。
この場合、司法書士は辞任しなければなりませんので、始めから終わりまで一人の専門家に対応してほしいという方は、弁護士に相談されるほうがいいと思われます。
他方で、連絡先を知らないだけで、特にトラブルがあるわけではないため、いきなり弁護士に依頼するのは気が引けるという方もいらっしゃるかもしれません。
相続人同士の関係や、今後どのように手続きを進めていきたいかなどに応じて、ご自身の状況にいちばん合いそうな専門家にご相談ください。
相続人同士で揉めている場合
紛争性がある案件を扱うことができるのは、弁護士のみです。
また、当初は問題がなさそうに見えた案件でも、依頼したあとに争いが起こってしまった場合には、司法書士はその時点で辞任することになります。
そのため、遺産分割協議をしても合意ができない可能性が高い場合には、初めから弁護士に依頼されることをおすすめします。
相続税がかかる場合
相続税が課税されるかどうかを知るためには、遺産を適正に評価したり、税額控除の対象となるかを的確に判断したりしなければなりません。
しかし、相続税は複雑で細かい規律がなされており、判断にあたっては高度な専門知識が必要になってきます。
申告や納税が必要な方は、税理士や税務署にご相談ください。
なお、遺産相続手続きを司法書士に依頼したうえで、提携している税理士を紹介してもらうのもいいでしょう。
遺産相続手続きは自分で出来る?
遺産の相続手続きは、相続人自身が行うことも可能です。
ただ、それぞれの手続きを行うには時間や手間がかかり、また、専門的な知識が必要な場面もあるため、専門家に依頼するケースも少なくありません。
司法書士や弁護士が遺産の換金手続きに関与する場合には、事務所の預かり金口座に入金してもらい、経費等の処理をしたうえで、各相続人に対して分配します。
一つの口座を解約するだけでも労力を要しますので、複数の金融機関に口座がある場合などには、時間や手間を省くことができます。
ご自身でもやりやすい場合と、難しくなる傾向がある場合をまとめましたので、判断の目安としてご活用ください。
【比較的やりやすいケース】
- 相続人が配偶者や子しかいないなど、相続関係がわかりやすい
- 遺産があまり多くない
【複雑になる可能性があるケース】
- 相続人の数が多い
- 相続人が兄弟姉妹や甥姪
- 関係者の中に亡くなっている人がいる
- 長期間にわたって相続手続きがされていない
- 相続人の中に、遠方や海外に住んでいる人がいる
- 相続人の中に面識のない人がいる
- 遺産が多い
- 遺産や相続人を把握していない
自分で手続き出来るか不安、面倒だからすべて丸投げしたい、といった方は当事務所が全て代行しますので、お気軽にお問合せください。
この記事の執筆者
-
東京司法書士会所属 登録番号7208号
東京都行政書士会所属 登録番号第19082417号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、遺産相続、不動産登記手続き、不動産に関する紛争の解決(立ち退き、賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。
- 2024年4月12日相続登記相続登記が義務化|義務化された背景やその他の改正についても解説
- 2023年9月21日時効取得時効取得は難しい?不動産の時効取得について徹底解説
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