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司法書士法人・行政書士事務所リーガル・ソリューションは、東京都新宿区にある司法書士・行政書士事務所です。

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共有持分を相続した場合の相続登記|計算方法や相続人が不存在の場合も解説

更新日:2022-01-04
共有名義のマンションを相続した場合の手続きについて知りたい
夫婦共有名義で片方が死亡した場合はどうなる?
共有名義の不動産を相続した場合の名義変更の手続きを検討している 

この記事はそのような方向けに書いています。

こんにちは、司法書士の樋口です。
私は東京都新宿区に本社を構える司法書士法人リーガル・ソリューションの代表司法書士で、相続、不動産登記、不動産に関する訴訟手続きをメインに取り扱っています。

夫婦ペアローンで不動産を共同で購入した場合や、親から出資を受ける場合等登記名義人が複数人になることを共有状態と言います。

共有者それぞれの不動産に関する内在的な権利の割合を共有持分と言い、共有持分も遺産の対象となり相続登記の手続きが必要です。

この記事ではそもそも共有持分とは何か、登記申請書、共有持分を相続した場合の法定相続分の計算方法や相続人がいない場合の手続きについても解説しています。

相続登記の全体について詳しく知りたい方は『相続登記とは?亡くなった人の不動産の名義変更について法改正点も含め解説』をご覧ください。

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そもそも共有持分とは

単語帳パーセント

物や権利の持ち方には、一人で100%を持つ単有と、複数の人で持つ共有とがあります。 

共有の場合に、それぞれの共有者が持っている権利の割合一般的に「共有持分」と呼んでいます。 

不動産の共有持分は、パーセンテージではなく「〇分の〇」という形で登記簿に記録されます。 

共有している不動産全部について、売却をしたり抵当権を設定したりするときは、共有者全員の同意を得なければなりません。 

他方、自分の持分だけであれば自由に処分することができ、他の共有者の承諾などは不要です。 

共有状態での売却する場合の具体例

共有者の誰かが死亡した場合には、その人の相続人が名義変更の手続きを行い、新たな共有者となります。 

これは被相続人が持っていた共有持分のみの相続登記手続きですので、他の共有者が関与することはありません。

なお、共有持分の相続の場合には、財産全部を承継する場合に比べて価格が低くなります。 

そのため、相続税の節税対策として、あえて生前に共有関係にしておくケースもあるようです。 

ただし、共有の関係性によっては小規模宅地の特例などの特例措置が適用されなくなる可能性もあります。

関連記事:放置してもかかる?相続登記(不動産の名義変更)と相続税について解説

不動産が共有関係となる例

For Exemple

不動産が共有になる理由は多々ありますが、特に多いケースを3つ取り上げます 

  • 物件の購入時に複数の人が資金を出した場合
  • 近所で私道持分などを共有している場合
  • マンションの集会所などを共有している場合

夫婦共同で購入

不動産を購入する際に何人かで資金を出し合ったときは、その出資の割合に応じて共有持分を取得することになります。 

例えば、AB夫婦が4,000万円でマイホームを購入する際に両者が代金を負担するような場合です。 

ここで、Aが住宅ローン(借入額3,200万円)を利用し、Bが自己資金800万円を出したとすると、A持分は5分の4、B持分は5分の1となります。

夫婦共同で購入した場合の共有持分割合

出資していないのに持分を持つ出した資金と持分の割合が一致していないなどの場合には、贈与税が課せられる可能性があります。

私道持分

一戸建てを所有している場合、前面道路やごみ置き場などを近所の人たちと共有しているケースがあります。

私道を近隣住民で共有する場合の具体例

私道部分は固定資産税が非課税とされていることも多く、この場合には市区町村町からの納税通知書・課税明細書に記載がされません  

そのため、共有持分があることに気づかず、戸建て(家屋とその底地)のみ登記手続きをして、私道部分の申請を漏らしてしまうケースも少なくありません。

マンションの共用部分

マンションには、住戸部分のほかに、廊下やエレベーターなど居住者全員が使用できる共用部分があります。 

共用部分のうち集会所、管理人室、倉庫、ボイラー室、駐車場、ごみ置き場など、独立した建物として登記ができる場合があります。 

ただし、権利者全員を登記するのは煩雑なため、築年数が浅いマンションでは、こうした設備は規約共有部分とされ、権利関係は記録されていないことが多いです。  

これに対し、比較的古いマンションや団地では、共用の設備を居住者全員が共有する形で登記がされていることも少なくありません。

マンションの共用部分を居住者全員で共有

先ほどの私道部分と同じく、登記漏れが生じやすいケースです 

相続する持分の計算方法

白い電卓アップ

【事例】
AB夫婦は、持分各2分の1で不動産を共有していた。
Aが死亡し、Bと子CDが法定相続分どおりに不動産を取得することになった。
その後、Cが死亡した。
Cには配偶者Eと子FGがおり、それぞれ法定相続分どおりに取得する旨の合意が成立した。
 

 Bの持分:(Aの持分1/2)×(Bの法定相続分1/2)=1/4 

※もともと持っていた持分1/2と合わせ、Bの持分は3/4となります 

CDの持分:(Aの持分1/2)×(C・Dの法定相続分1/4)=1/8  

② Eの持分:(Cの持分1/8)×(Eの法定相続分1/2)=1/16 

FGの持分:(Cの持分1/8)×(Eの法定相続分1/4)=1/32

共有持分を相続した場合の共有持分の割合

このように、被相続人の共有持分を数人が分割して承継する場合には、下の代に行くほど持分が細分化され分母が大きくなっていきます。

関連記事:法定相続分による相続登記の流れ|保存行為で単独申請する場合についても解説

登記申請書

ノートとエンピツ

【事例】
AB夫婦は、不動産を持分2分の1ずつで共有していた。
Aが死亡し、相続人BCDの間で、Aの持分をBが取得する旨の遺産分割協議が成立した。 

共有者の一人が死亡した場合の相続登記までの流れ

相続登記の手続きは、変更する名義が単有でも共有であっても、基本的には大きな違いはありません。 

関連記事:やり直し出来る?遺産分割による相続登記(不動産の名義変更)について解説

(申請書記載例) 

相続を原因とする持分全部移転登記申請書の記載例

※1 登記の目的  

A持分全部移転」とします。  

なお、不動産が複数あり、被相続人の共有持分が物件ごとに異なる場合には、持分移転登記も分けて申請するのが一般的です。 

持分が異なる場合登記申請を分ける具体例

※2 相続人 

今回の登記手続きにより、新たな登記名義人(B)が取得することになる持分(2分の1)を記載します。  

事例のようにAの持分全部をBが引き継ぐ場合でも、この持分の表示を省略することはできません。 

※3 登記原因証明情報 

遺産が不動産の共有持分である場合には、その持分を遺産分割協議書にも記載します。 

(記載例)

共有持分相続の場合の遺産分割協議書記載例

※4 課税価格 

相続による持分移転登記の場合は、(申請する年度の固定資産評価額)×(移転する持分割合)で算出します(1,000円未満切り捨て)。  

例えば、不動産の評価額を1,500万円とすると、(1,500万円)×1/2=(750万円)が課税価格となります。 

相続人がいない場合

明るい部屋と椅子

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亡くなった共有者に相続人がいる場合には、その共有持分を取得した相続人が新たな共有者となります。 

では、相続人がいない場合には、どのように処理されるのでしょうか。 

民法は、「相続人のあることが明らかでないとき」、相続財産は法人となると定めています。 

この相続財産法人については相続財産管理人が選任され遺産の管理、債権者への弁済、相続人の捜索などを行います。 

相続人が見つかった場合には、遺産はその人へと引き継がれ、相続財産法人は初めから成立しなかったものとされます。 

捜索をしてもなお相続人を発見できなかったときは、遺産は次の順番で引き継がれます 

①特別縁故者(民法第958条の3
②財産の共有者がいる場合には、当該共有者(民法第255条)
③国(民法第959条)

不動産の共有者の相続人が存在しない場合の共有持分の帰属先の具体例

ただし、遺産がマンションの1部屋(分譲マンション)である場合には、①特別縁故者がいないときは、②他の共有者ではなく③国庫に帰属します(区分所有法第24条参照) 

近年建てられたマンションは、専有部分(住戸部分)と敷地権が一体となっており、別々に処分することが禁止されていることがほとんどです  

相続人や特別縁故者がいない場合の処理についても、権利関係が複雑にならないよう、敷地持分は他の共有者には帰属しないとされています。 

他の共有者に帰属しない場合の例外

相続人不存在

相続人のあることが明らかでないときとは、被相続人が亡くなった時点で、相続人がいるかどうかがはっきりしない状態をいいます。  

例えば、次のような場合です  

  • 戸籍上、相続人となるべき人が存在しない
  • 戸籍上の相続人は存在するが、相続放棄、廃除、欠格などにより相続する資格を失っている

一方、次のケースは「相続人のあることが明らかでないとき」には該当しません。 

  • 戸籍上の相続人が存在するが、その行方や生死がわからない場合
  • 相続財産全部の包括受遺者がいる場合

相続財産管理人が選任された後の流れ

相続財産法人が成立すると相続財産管理人が選任された旨、債権者や相続人は一定の期間内にその権利を主張すべき旨などが公告されます。 

本稿執筆時点での、相続財産の管理清算や相続人の捜索手続きの流れは、下の図のとおりです。 

この手続きについては、令和3年4月21日に法改正がされており、令和5年4月1日から施行される予定です。  

改正法では、相続財産管理人が「相続財産清算人」という呼び名に変わり、また、相続人の不存在が確定するまでの期間が短縮されています。

相続人が不存在になった場合の法改正点

公告をした結果、所定の期間内に相続人としての権利を主張する人が現れなかったときは、相続人がいないことが確定します。 

ここで、特別縁故者からの申立てがあった場合には、家庭裁判所は、清算後に残った財産の全部または一部を、その人に分与することができます。  

この申立ては、相続人の不存在が確定してから3か月以内にする必要があります。 

特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」をいいます  

例えば、次の人が該当する可能性があります 

  • 被相続人と事実婚の関係にあった人
  • 被相続人の身の回りの世話をしてきた近隣在住の知人
  • 被相続人が入所していた障害者支援施設を運営する社会福祉法人

民法第958条の3の審判

【事例】
AとBは、不動産を持分各2分の1で共有していた。
Aが相続人なくして死亡し、その持分全部を特別縁故者Cに与える旨の審判が確定した。 

ここで、登記名義人がAのままになっているときには、Cへの移転登記の前提として、相続財産法人へ名称を変更する登記手続きが必要になります。  

(相続財産法人への名義変更登記の申請書記載例)

相続人不存在の登記申請書記載例

※1 登記の原因 

原因日は被相続人の死亡日です。  

※2 当事者 

実際に手続きを行うのは相続財産管理人ですが、申請人欄には「亡〇相続財産」と記載します 

※3 添付情報 

登記原因証明情報として、相続財産管理人の選任審判書を添付します。 

※4 登録免許税  

登録免許税は、(1,000円)×(不動産の個数)です。 

特別縁故者への持分移転登記の申請書記載例)

民法第958条の3の審判の登記申請書記載例

※1 登記の原因  

家庭裁判所の審判が確定した日の翌日が原因日、「民法第958条の3の審判」が登記原因となります。 

なお、令和5年4月1日以降は、民法第958条の3は民法第958条の2に条数が繰り上がります。 

2 当事者  

特別縁故者(C)が権利者、相続財産法人が義務者となります。  

※3 添付書類  

登記原因証明情報として、家庭裁判所の審判書と確定証明書を添付します。 

※4 登録免許税 

登録免許税は、(課税価格)×(2.0%)です。

特別縁故者不存在確定

特別縁故者からの申立てがされなかったとき、または申立てを却下する審判が確定したときは、他の共有者への持分移転の手続きをします。 

【事例】
AとBは、不動産を持分各2分の1で共有していた。
Aが死亡し、相続人も特別縁故者もいないことが確定した。  

先ほどの事例と同じく、共有者Bへの持分移転登記の前提として、登記名義人を相続財産法人に変更する登記手続きが必要になります。 

(共有者への持分全部移転登記の申請書記載例)

特別縁故者不存在確定の登記申請書記載例

※1 登記の原因 

特別縁故者不存在確定」とします。 

原因日付は、特別縁故者の申立期間が満了した日または申立却下の審判が確定した日の翌日です。 

この日付は、現行法においては、被相続人が死亡してから少なくとも13か月が経過していなければなりません。  

各種の公告期間に10か月以上、特別縁故者の不存在が確定するのに3か月を要するためです。  

※2 申請人 

他の共有者が登記権利者、相続財産法人が登記義務者となり、共同で申請します。 

登記義務者については、相続財産管理人が法定代理人として手続きを行います。 

※3 添付情報 

登記識別情報(登記済証)は被相続人の、印鑑証明書は相続財産管理人のものを、それぞれ添付します。 

登記原因証明情報となるのは、所定の期間内に特別縁故者からの財産分与の申立てがなかったこと、または申立却下の審判が確定したことを証明する書類などです。  

なお、報告形式の登記原因証明情報を用いることも可能です。  

また、代理権限証明情報として、相続財産管理人の選任審判書も必要になります。 

※4 登録免許税 

登録免許税は、(課税価格)×2.0%)です。 

課税価格が750万円の場合、15万円が登録免許税額となります。 

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この記事の執筆者

司法書士 行政書士 樋口亨
司法書士 行政書士 樋口亨
東京司法書士会所属 登録番号7208号
東京都行政書士会所属 登録番号第19082417号
司法書士法人リーガル・ソリューション 代表司法書士
行政書士事務所リーガル・ソリューション 代表行政書士
前職の不動産仲介営業マン時代に司法書士試験合格。
都内の司法書士法人に転職し経験を積んだ後、司法書士法人リーガル・ソリューションを設立、同社代表社員就任。
開業以来、遺産相続、不動産登記手続き、不動産に関する紛争の解決(立ち退き、賃貸トラブル、共有物分割請求、時効取得等)に特化。
保有資格は、司法書士、行政書士、宅地建物取引士、マンション管理士、管理業務主任者、競売不動産取扱主任者。

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