~競売物件の購入後の手続に関して~

~競売物件の購入後の手続に関して~

 

① 不動産引渡命令

競売物件は、売却され代金が納付されて所有権が移転するまでは、物件の所有者が通常の用法に従って使用することができ、現状のまま売却するため、買受人が代金を納付して所有者になった場合でも、占有者等がいて、そのままでは使用できない状態になっていることが多いです。その場合に、競売物件の占有を解いて、物件を使用できる状態にするための執行手続内の簡易な手続が ”引渡命令” です。

1.引渡命令の申立人

競売手続内で目的不動産の簡易な引渡しを受けることができる引渡命令の申立ては、競売手続の ”買受人” に認められた権利です。競売不動産の買受人から転売を受けた者等の特定承継人は引渡命令の申立てはできません(買受人に代理して申立てをすることもできない)。
※ 買受人は目的不動産を他の者に譲渡した後もその申立資格を失わないとされています。
売却決定確定後に相続、合併等の一般承継が生じた場合は、相続人、合併会社等一般承継人が引渡命令の申立てをすることができます。
共同で買受人となった場合は、共同買受人全員が申立人として申立てをすることができますが、1個の引渡命令申立権が共同買受人に不可分的に帰属し、準共有状態になっているとして共同買受人が単独でも申立てができます。

2.引渡命令の申立期間

引渡命令の申立ては、執行手続内の手続であり、いつでも申立てができるものではなく、買受人は、代金を納付してから6か月以内に不動産引渡命令の申立をしなければなりません。

3.引渡命令の申立手続

引渡命令の申立は、相手方1人につき500円の収入印紙を貼付した(消印はしない)申立書等を執行裁判所に提出して行います。申立書には、買受人の同一性を証するために、入札書に押印した印を押します。申立てに際しては、その他に当事者目録、物件目録、郵便切手等が必要になりますが、詳細は各管轄の裁判所よって扱いが異なる可能性があるため、確認が必要です。

4.引渡命令の相手方

競売事件の所有者(強制競売の場合の債務者、担保不動産競売の場合の所有者)は、売主としての義務を負うとして、当然に引渡命令の相手方となりますが、それ以外の占有者の場合は、平成8年民事執行法の改正法が適用される事件(=平成8年9月1日以降に申立てられた事件)については、買受人に対抗することができる権原を有しない現実の占有者が相手方となります。
→ 物件明細書の「4 物件の占有状況等に関する特記事項」の欄に記載された者は、基本的に引渡命令の相手方となります。
買受人の代金納付後(所有権移転後)に、競売事件の所有者について、死亡、合併等による一般承継が生じたときは、破産管財人が相手方となります。
引渡命令の相手方の占有認定は、基本的には、執行裁判所の裁判所書記官の認識を記載した物件明細書を基準として行うため、物件明細書のとおりの占有者に対して引渡命令の申立てを行う場合は、特に資料を添付する必要はありませんが、それと異なる競売事件の所有者以外の、その後の占有者等を相手方とする場合は、その者が買受人に対抗することができる権原を有しない占有者であることを主張立証する報告書(申立人が現地に行って、占有者や近隣者に聞いた話を記載し、現場の写真等を添付したもの)等の資料を提出する必要があります。
引渡命令は、全ての占有者に対して発付することができるものではありません。占有者の中には買受人に対抗することができる権原を有している者もいて、そのような者に対しては引渡命令を発付することはできないものとなります。買受人に対抗することができる権原を有する者は、物件明細書の「3 買受人が負担することとなる他人の権利」の欄に記載されています。また、平成8年の民事執行法の改正法が適用されない事件(平成8年8月末までに申立てられた競売事件)では、買受人に対抗することができる権限を有しない占有者でも、基本的には、競売事件の所有者(買受人にとっては前所有者)との関係で占有する権原がある者(買受人には対抗することができないが、賃借権、使用借権等に基づいて占有している者)については、引渡命令を発付することができません。

5.引渡命令の審理手続 -原則審尋不要

平成8年の民事執行法の改正前は、所有者以外の不動産の占有者に対して引渡命令を発付するには、既にその者を審尋している場合を除き、その者を審尋しなければならないとされていましが、同改正法により、その者を審尋した場合の他、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有している者でないことが明らかであるときも、審尋することなく引渡命令を発付することができることになりました(平成8年9月1日以降に申立てられた競売事件に適用さてる)。
上記により、買受人に対抗することができる権原を有しないとして、物件明細書の「4 物件の占有状況等に関する特記事項」の欄に記載されている者に対しては、審尋をすることなく、引渡命令を発付されることが一般的になりました。

6.引渡命令の内容

引渡命令は、競売対象物件に対する占有者(相手方)の現実の占有を解いて、買受人(申立人)にその占有を取得させる債務名義取得手続であり、競売対象建物の占有を排除するのが通常のものです。競売対象建物については、当該建物に対する引渡命令が発付されれば、当該建物の占有に伴う土地の占有については、当該建物に対する引渡命令の執行により廃除することができます。
引渡命令は土地についても発付することができ、これは土地上に売却対象外建物が存する場合か否か問いませんが、建物を収去して土地の明渡しを求める引渡命令は発付することはできないので、競売土地上の売却対象外建物を収去するには、売却対象外建物所有者との任意での話し合いがまとまらなければ、建物収去土地明渡の訴訟を起こさなければならないとされています。このように、売却対象外建物が存する土地についての引渡命令は発付されるものの、事実上執行不能となることが予想され、実行性があるのは、動産を置いて土地を占有しているときに引渡命令の申立てをする場合です。

7.引渡命令に対する不服申立

引渡命令の相手方は、その命令の送達を受けてから1週間以内に執行抗告状を引渡命令を発した裁判所に提出することにより、不服申立をすることができます。これにより、引渡命令の確定は遮断され、抗告に対する判断が申立人に告知されるまでは引渡命令の強制執行ができないことになります。
また、引渡命令の申立てを却下する決定に対しては、申立人が、決定の告知を受けてから1週間以内に執行抗告の申立てをすることができます。

8.引渡命令の強制執行

引渡命令が発せられ、それが相手方に告知されてから不服申立がされずに1週間を経過するか、引渡命令に対する執行抗告の却下または棄却の決定が抗告人(引渡命令の相手方)に告知されることにより確定した場合には、引渡命令の執行文の付与、相手方に対する引渡命令の送達証明書の交付をそれぞれ受けて、それらの文書に基づいて執行官に対して引渡命令の強制執行の申立てをすることなります。そのほか、強制執行費用の予納が必要になります。

 強制執行の手続について

引渡命令の強制執行により、買受人が現実に利用できる状態にするにはそれなりの時間と費用がかかります。占有者が任意に荷物を受け取らないときは、事実上債権者側がその荷物を保管し、その費用等を負担しなければならない場合もあり、対象物件に寝たきりの病人等がいる場合、執行に時間がかかったり、場合によっては執行が不能になり、自己使用が不可能になる場合もあります。
→ 競売で買受の申出をするときは、上記の点を含めて、対象物件の占有状況の現状をきちんと把握しておく必要があります。
引渡命令の執行に要した執行費用は、申立人である買受人が予納しなければなりませんが、本来は、引渡命令の相手方である占有者が負担すべきものですが、その占有者が任意に執行費用の支払いをすることはほとんどありません。執行費用については、強制的に取立てをすることもできますが、それには、執行費用額確定処分の申立てを執行裁判所の裁判所書記官に対して行うことになり、その認容処分を債務名義として、占有者の財産を差し押さえて、その財産を換価し得た金銭から支払いを受けることになります。この執行費用確定処分の申立てをしても、占有者に財産がなければ意味のない手続になってしまうので、申立前に確認する必要があります。

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