~代金納付手続について~

~代金納付手続について~

① 代金納付

売却許可決定が確定すれば、買受人は代金を納付することができます。そして、その代金を納付したときに、競売対象物件の所有権を取得することになり、これが代金納付の効果となります。
買受人が競売物件を第三者に転売した等によって特定承継が生じた場合でも、競売手続内では、買受人の地位の譲渡を認めないのが実務の取扱いとなっており、転売を受けた第三者が残代金を納付して直接、所有権移転の登記を受けることはできないものとなっています。
これに対して、買受人について相続や会社の合併等の一般承継が生じた場合は、それを証する戸籍謄本や合併等があったことを証する書面である履歴事項全部証明書等を添付することによって、相続人等の一般承継人の名義で残代金を納付して直接、所有権移転の登記を受けることができます。このような一般承継が生じた場合には、承継が生じた時期によって手続が多少異なることがから裁判所の担当書記官に必要な書類と手続を確認したほうがよいでしょう。

② 代金納付の方法 -住宅ローンの利用

1.代金納付の額

買受人が買受の申出の際に納付した買受申出保証金は代金に充当されるので、買受申出金額から納付した保証金を差し引いた額を残代金(代金納付の額)として納めることになります。

2.通常の代金納付方法

買受人は、買受申出保証金を除いた残代金を一括で納めなければならず、分割等で残代金を納める方法は認められていません。
残代金を納める方法としては、
①現金で納付する方法
②保管金振込書の用紙により日銀代理店の裁判所の口座に振り込む方法等
があります。
残代金は、裁判所の保管金となりますので、買受人は、書記官が保管金提出書に納付すべき金額等を記載したものに、①現金または、②保管金受入手続添付書を添えて、歳入歳出外現金出納官吏に提出して、保管金受領証書の交付を受けることによって残代金を納付したことになります。
※ 保管金振込書の用紙により日銀代理店の裁判所の口座に振り込む手続をしても、裁判所で上記手続をしないと、代金納付したことになりません。

3.買受申出保証金を金銭以外の方法で納めた場合の代金納付方法

保証金を支払保証委託契約締結証明書を提出する方法で行った場合(期間入札の場合)や裁判所が相当と認める有価証券を提出する方法で行った場合(特別売却の場合)は、代金全額に相当する金額を納付しなければならないことになります。買受人が代金を納付しなかった場合は、買受申出保証を代金に充てるため、それらの保証を換価して現金化することになります。それらの代金不納付の際の保証金は、買受人が返還を請求することができず、最終的には債権者に配当等がされることになります。

4.住宅ローンの利用

従前、残代金の納付については、残代金を一括して納付し、それに基づいて、裁判所の担当書記官が所有権移転等の登記嘱託を、管轄法務局に対して通常郵送で行っていたので、いつその嘱託書が管轄法務局で受け付けられるかに関しては全く不明であり、転売等による所有権移転登記がされると抵当権設定登記をすることができない可能性があるため、競売対象不動産に抵当権を設定して残代金を金融機関から借りて支払うことが、事実上不可能でした。
しかし、平成10年の民事執行法の改正により、買受人と抵当権を設定する金融機関が、司法書士または弁護士を指定して、所有権移転等の登記嘱託書の交付の申出書を提出し、その司法書士等に登記嘱託書を交付することによって、所有権移転登記と同時に抵当権設定登記を行うことができ、この制度の導入により、競売不動産の購入について住宅ローンを利用することができるようになりました。
→ この制度を ”民事執行法82条2項の申出” といいます。

※ ”民事執行法82条2項の申出” について

5.差引納付

買受人が売却代金から配当等を受けるべき債権者(対象物件の抵当権者や判決等の債務名義を持つ差押債権者、配当要求債権者等)であるときは、売却許可決定が確定するまでに執行裁判所に申し出て、配当または弁済を受けるべき額を差し引いて代金を配当期日または弁済金交付の日に納付することができます。
この場合、買受人の受けるべき配当の額について異議の申出があったときは、買受人は、当該配当期日から1週間以内に、異議にかかる部分に相当する金銭を納付しなければなりません。したがって、この差引納付の申出をした場合でも、配当の日には、残代金の全額に相当する金銭を支払う準備をしておく必要があります。

③ 代金納付期限の通知 -その後の手続

1.代金納付期限通知

売却許可決定が確定すると、買受人に対して、代金納付期限通知書が送達されます。この代金納付期限は、規則上、売却許可決定が確定してから1か月以内の日としなければならないとされています。しかし、これは訓示規定と解されていて、実際には、売却許可決定が確定してから1か月から2か月程度の間に代金納付期限通知書が送達されることが多いです。
期限前に代金を納付することは認められますが、庁によっては、事前に代金が納付されたときに迅速に事務処理ができるかどうかわからない等の理由で、事前に担当書記官の確認を取ることを要求する庁もあるため、期限前に代金を納付するときは、担当書記官と確認を取ることをオススメします。

2.代金納付手続

代金の納付は、現金で納めることもできますが、通常は、代金納付期限通知書に保管金振込書に用紙が同封されているので、それにより最寄りの金融機関から日銀代理店の裁判所の口座に振込み、買受人は振り込んだ旨のある保管金受入手続添付書を持参し、裁判所に出頭します。そして、係書記官から交付される保管金提出書に必要事項を記載して、それに保管金受入手続添付書を添えて、歳入歳出外現金出納官吏に提出し、保管金領収証の交付を受けることによって残代金を納付してものとなります。

3.登記嘱託のための書類等の提出

買受人は、代金納付の際に、裁判所書記官が、競売対象不動産の所有権移転登記等の嘱託手続をするために必要となる、以下の書類等を提出しなければならなりません。
①登録免許税
買受人に対する所有権等の権利の移転登記の登録免許税は、目的不動産の固定資産評価額を基準(課税価額)として算出します。
不動産が複数ある場合は、その合計額が課税価額となり、目的不動産がマンション等の敷地権付きの建物のときは、その敷地権部分についても持分に応じた登録免許税が必要になります。
登録免許税に関して移転する権利が
所有権の場合 → 課税価額に1000分の20を乗じた額
地上権及び永小作権の場合 → 課税価額に1000分の10を乗じた額
租税特別措置法第73条の適用をすることができる住宅用家屋(建物)についての所有権移転の場合 → 租税特別措置法の適用に関する市町村長または特別区長の証明書(既存宅地証明書)を添付することができれば、課税価額に1000分の3を乗じた額

私道、公衆用道路等の非課税扱いとなっている場合 → 私道等の近隣地の価額から近隣地の1㎡の単価を算出し、私道等の平米数にその1㎡の単価を乗じて算出した価額に100分の30を乗じた額が私道等の価額となる
地上権、永小作権、賃借権若しくは採石権の設定の登記がされている土地または賃借権の設定の登記がされている建物について、これらの権利の登記名義人が当該土地または建物を取得し、所有権の移転の登記を受ける場合 → 登録免許税の税率に100分の50を乗じた税率となる(登録免許税は通常の2分の1)

登録免許税の計算方法は、固定資産評価証明書等に「価額」として載っている価額(課税価額)の1000円未満を切り捨てた金額に税率を乗じて算出し、算出した額の100円未満を切り捨てて算出します。金額が1000円未満の場合は、1000円です。

不動産に設定された抵当権等の担保権、買受人に対抗することができない賃借権の登記等や差押、仮差押えの登記等は抹消されます。
この場合の登録免許税は、不動産1個につき1000円です。
抹消する不動産の個数が20個を超える場合は、2万円となります。

登録免許税は、日銀代理店、郵便局または登録免許税の収納を行う税務署に登録免許税を納付することによって発行される領収証書、または登録免許税に相当する収入印紙によって納付します。

②郵便切手
・登記嘱託書送付料 → 570円1組
登録免許税を収入印紙で提出し、その額(損害賠償額)が10万円を超える場合は、その額が5万円ごとに21円を追加した郵便切手を提出する必要があります。
※民事執行法第82条2項の申出の場合は不要
・登記完了証・登記識別情報通知書の裁判所への返送料 → 522円1組
買受人の登記が嘱託されて、登記所から登記完了証・登記識別情報通知書が送られてくる際の郵便料となります。
・登記完了証・登記識別情報通知書の買受人に対する送付料 → 1082円1組
物件が多数等で登記完了証・登記識別情報通知書が重くなる場合は、それに応じた郵便料を加算することがあります。

③不動産の最新の登記事項証明書等
競売対象不動産の競売記録には、差押時の当該不動産の登記事項証明書しかないため、その後に所有権の移転登記や抵当権・賃借権の設定登記がされた場合に差押時の登記事項証明書に基づいて登記嘱託をしてしまうと、本来抹消すべき抵当権等の登記は抹消されずに残ってしまうことになり、追加の抹消の手続をとる必要が出てきてしまうので、買受人は、最新の当該不動産の登記事項証明書を提出する必要があります。

④買受人の住民票または資格証明書
登記権利者の住所を証する住所証明書(自然人の場合は住民票、法人の場合は資格証明書等)を提出する必要があります。売却許可決定時と住所や名称等が違っている場合には、その変更の経緯がわかるものを提出する必要があります。買受人が外国人の場合は、外国人登録証明書を提出することになります。

⑤競売対象不動産の固定資産評価証明書
登録免許税の額を算出するために、固定資産評価証明書の提出が必要となります。
登記嘱託がその年の1月1日から3月31日までの期間のものは前年の12月31日現在の課税台帳の登録価額により、その年の4月1日から12月31日までの期間のものはその年の1月1日現在の課税台帳の登録価額により、それぞれ登録免許税の額を算出します。
※ 3月末から4月の初頭にかけて代金納付をする場合には、添付する固定資産評価証明書に気をつける必要があります。

4.所有権移転登記等の嘱託

買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官が買受人が取得した権利(所有権等)の移転とともに、競売の売却により消滅した権利または売却により効力を失った権利の取得若しくは仮処分にかかる登記の抹消及び差押えまたは仮差押えの登記の抹消の登記嘱託をします。

<抹消される登記>

差押え及び仮差押えの登記は全て
債権の担保を目的とした抵当権等
賃借権・地上権・地役権等の登記は、買受人に対抗することができないもの
担保目的ではない所有権移転の仮登記は、抵当権等よりも前に設定された最先順位のもの以外
→ 基本的には、物件明細書の「3 買受人が負担することとなる他人の権利」の欄に記載されているもの以外のものに関する登記は、抹消されることになります。
5.代金納付期限の延期、代金不納付の効果
原則として、代金納付期限を延長することはできません。
そして、残代金を期限内に納めなかった場合は、納めた買受申出保証金は ”返還されず” 、その保証金については、最終的に競売対象不動産の債権者に配当等が実施されることになります。

5.代金納付期限の延期、代金不納付の効果

原則として、代金納付期限を延長することはできません。
そして、残代金を期限内に納めなかった場合は、納めた買受申出保証金は ”返還されず” 、その保証金については、最終的に競売対象不動産の債権者に配当等が実施されることになります。

 

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