買受人に対抗できる占有者等

買受人に対抗できる占有者等

上記で説明したとおり、裁判所の競売物件は、物件の所有者の意思に反して強制的に売却する手続であり、一般の任意の売却手続と違い、問題がある物件が多いのが現実です。
問題の中でも買受希望者が1番気になる点は、 ”買受人に対抗できる占有者” の存在です。
なぜなら、競売物件に買受人に対抗できる占有者等がいる場合には、買い受けても競売手続上の引渡命令や訴訟手続等によりその占有者を追い出すことはできないからです。
そのような、”買受人に対抗できる占有者” がいる場合等には、
物件明細書の 「3 買受人が負担することとなる他人の権利」 の欄に記載されています。
また、競売によって成立する対象土地の負担となる法定地上権は、 「2 売却により成立する法定地上権の概要」 の欄に記載されています。

 

①最先の賃借権者

・最先の建物賃借権者
競売対象建物の抵当権等の担保物権設定登記前から対抗要件を備えた最先の建物賃借権者は、その占有権原を買受人に対抗することができ、期間の更新もすることができます。
建物の登記記録に建物賃借権の登記をすることにより、建物賃借権の対抗要件を備えることができますが、この登記は、賃貸人の協力が必要となりますが、登記されると、借地借家法上、賃借した建物の引渡しに建物賃借権の対抗力が認められています。
このような最先の賃借権者は、長期間の賃料不払いなどの新たに賃貸借契約を解除するような事情が出てこない限り、賃貸物件を使用することができます。
・最先の土地賃借権
競売対象土地の抵当権等の担保物権設定登記前から対抗要件を備えた最先の土地賃借権者は、その占有権原を買受人に対抗することができ、期間の更新もすることができます。
土地の登記記録に建物賃借権の登記をすることにより、土地賃借権の対抗要件を備えることができますが、この登記は、賃貸人の協力が必要となりますが、登記されると、借地借家法上、建物所有を目的とする土地賃借権については土地上に賃借権者の登記した建物を所有することに対抗力が認められています。
建物所有を目的とする最先の土地賃借権は、建物は数十年存続するものであり、その間競売での土地の買受人は、目的の土地を使用することができないものとなります。したがって、通常、建物所有を目的とする最先の土地賃借権者は、長期間の地代不払などの新たに賃貸借契約を解除するような事情が出てこない限り、目的土地を使用することができます。
※ 建物の存続中は、その建物を譲渡して賃借権の譲渡等をする場合には賃借人の承認を得なければならず、承認を得ずに、譲渡等の行為を行った場合には、賃貸借契約を解除することができることになっていますが、譲渡等の行為が賃貸人に対する ”背信的行為と認めるに足らない特段の事情” があるときは、賃貸借契約を解除することはできません。
また、建物を譲渡して賃借権の譲渡等をすることについて賃貸人の承諾が得られない場合、賃借人は、借地非訟事件として、裁判所に対して、賃貸人の承諾に代わる許可をを求めることもできます。
→ つまり、 ”自己使用を考えている買受希望者” は、このような最先の賃借権を有する占有者がいる不動産が競売対象物件になっている場合は、当該不動産を購入しても、賃借権者が賃料を支払わない等の賃貸借関係の ”信頼関係” を破壊するような事情が出てこない限り自己使用することができないことになります。

 

② 短期賃借権者

最先順位の抵当権等設定登記に後れる賃借権で、民法602条に定める期間(建物の賃貸借 3年)を超えない賃借権を保護する短期賃借権制度は、平成15年の民法等の一部改正により廃止されました。よって、抵当権等に後れる賃借権は、その期間の長短にかかわらず、抵当権者等及び競売による買受人に対抗することができないことになりましたが、上記の改正法施行の際に存在する抵当不動産の賃借権(同改正法施行後に更新されたものも含む)で、最先の抵当権等設定登記後に対抗要件を備えた民法602条に定める期間を超えない賃借権については、従前の例により、旧民法395条が適用されて短期賃借権制度の適用を受けることに」なります。
→ 上記改正法施行の際に存する民法602条に定める期間を超える賃借権である長期賃借権    ⇒ 新法が適用される
→ 上記以外の同法施行の際に存在する短期賃借権(改正法施行後に申し立てた競売事件も含む) ⇒ 短期賃借権制度が適用される

・建物の短期賃借権者

最先順位の抵当権等の設定登記後、競売による差押登記前に対抗要件を備えた賃借権者(賃借権の登記や建物の引渡し)で、
①民法602条の期間(3年)内の定めのあるものは → 差押後に期限が経過するまで
②期限の定めのないものは → 買受人から賃貸借契約を解約されるまで
短期賃借権者としてその占有権原を買受人に対抗できることになります。
このような短期賃借権者がいる競売不動産については、期間の定めのあるものは期限まで、期限の定めのないものは買受人が契約を解除してその解除の効力が生じるまでは、それぞれ買受人は使用することはできません。
その後も任意に引渡しをしない場合には、期限の定めのあるもので期限が経過しているものについては、引渡命令の手続を、
期間の定めのないもので買受人が契約を解除したものは訴訟手続を、
それぞれ採る必要があります。

・土地の短期賃借権者

最先順位の抵当権等の設定登記後、競売による差押登記前に対抗要件を備えた賃借権者(賃借権の登記や借地上に建物を所有すること)で、
①民法602条の期間(樹木の栽植、伐採を目的とする山林の賃借権 10年、その他の土地の賃借権 5年)内の定めのあるものは → 差押後に期限が経過するまで
②建物所有を目的としない土地賃借権や一時利用の土地賃借権で期限の定めのないものは → 買受人から賃貸借契約を解約されるまで
短期賃借権者としてその占有権原を買受人に対抗できることになります。
※ 建物所有のための土地賃借権で期間の定めのないものは、借地借家法3条により、期間が30年となり、短期賃借権には該当しないものとなり、買受人に対抗することはできません。
このような短期賃借権者がいる競売土地ついては、期間の定めのあるものは期限まで、建物所有を目的としない土地賃借権や一時利用の土地賃借権で期限の定めのないものは買受人が契約を解除してその解除の効力が生じるまでは、それぞれ買受人は使用することはできません。
その後も任意に明け渡しをしない場合には、引渡命令の手続では建物の収去をすることはできないため、建物の収去を求めるには、
訴訟手続を採る必要があります。

 

③ 地上権

地上権とは、民法において、「他人の土地において工作物または竹木を所有するためにその土地を利用する」物権と規定されています。
土地の利用権については、土地所有者と土地を利用する側の関係により、誰にでも土地の利用権を主張することができる地上権を設定することは非常に少なく、賃貸借契約を締結することが多いです。
実際によくある例が、地下・空間を目的とする地上権(区分地上権といいます)として、 ”地下鉄施設所有” を目的とする設定されていることが多いです。この場合の地上権は、上記で説明したとおり、誰にでも主張するこできる権利として、最先順位で登記がされたときは、地上権者である地下鉄施設所有者は、競売での買受人に対して権利の対象になった地下の範囲についての土地の利用権を主張することができます。
また、地下鉄施設所有を目的とする地上権が最先順位ではない場合でも、そのような公共的施設の設置を目的としたものを廃除することは事実上不可能となっています。

 

④ 法定地上権

土地とその土地上の建物の所有が同一の所有者である場合、当然に所有者の土地上の建物には利用権は設定していないものとなりますが、競売で土地や建物のみが売却されると、土地と建物の所有者が異なることになり、敷地利用権のない建物が生じてしまうことになってします。このような場合に、一定の要件があれば、法律上の地上権が成立し設定されたものとみなされます。この地上権を法定地上権といいます。
競売対象物件が建物で、その敷地について競売建物のために法定地上権が成立してしまうと、法定地上権という敷地利用権付きの建物が競売対象物件ということになります。
しかし、競売対象物件が土地であり、その土地上の売却対象外の建物について法定地上権が成立する場合は、その売却対象建物に対する法定地上権の負担のついた土地が競売対象物件ということになります。
法定地上権は、物権ということで誰に対してもその権利を主張することができます。
→ 法定地上権を有する建物所有者は、特別の事情がない限りずっとその敷地を利用することができる。
→ 法定地上権の負担のついた土地が競売対象物件である場合は、買受人としては、ずっと利用することができない土地を購入することになり、地代を得ることしかできないことになります。
法定地上権は、法律によって成立したものとみなされるものなので、その地代や期間等の内容については、敷地所有者と建物所有者等の法定地上権者との協議によって決めることになり、協議がまとまらないときは、訴訟等によって決めることになります。
※ 法定地上権の負担がついた土地であるということは、物件明細書の「3 買受人が負担することとなる他人の権利」の欄ではなく、 ”「2 売却により成立する法定地上権の概要」” の欄に記載されています。

 

⑥ 留置権等

競売対象不動産の占有者が、対象不動産に関して改装費・修繕費等を支出したと主張している場合があり、その費用について、占有者に償還請求権や留置権が認められなければ、買受人の負担となる権利とはなりませんが、そのような主張をいしている占有者がいるということは、買受人となった後の対象不動産に引渡しで揉める可能性が高いといえます。
そして、そのような改装費・修繕費等について、占有者に必要費や有益費の償還請求権が認められる場合は、その費用を支出した者に支払わなければなりません。
また、そのような競売対象物件について必要費や有益費の償還請求権に基づいて、競売対象物件について、その費用の償還を受けるまで引渡しを拒むことを主張している場合には、 ”留置権” が成立することがあり、法律上、支出した費用の支払いをしない限り、対象物件の引渡しを受けることができませんので、物件明細書に記載は気をつける必要があります。

 

追い出すことのできる占有者

裁判所の競売物件については、上記で説明したとおり、手続が開始されて差押えがされても、物件の所有者は通常の用法に従って使用・収益することは自由であり、所有者が使用したり、第三者に賃貸等をすることが、買受人が代金を納付して所有権が移転されるまではすることができます。
そのため、買受人に対抗できる占有者等がいない場合でも、競売物件には、買受人に対抗できないような占有者等がいることは多く、買受人としてはそのままでは自己使用することができない場合があります。自己使用するためには、競売手続上の引渡命令等によりその占有者を追い出す手続きを採る必要があります。

① 買受人に対抗することができない占有者は物件明細書に記載されている

買受人に対抗することができない占有者等は、物件明細書の「4 物件の占有状況等に関する特記事項」という欄に記載されています。買受人の立場上、転売を考えている場合でも、購入後に自由に使用することができるかどうかについては関心があることですので、この欄の占有者及びその占有の範囲等をよく確認しておく必要があります。
占有者については、物件明細書作成後も占有関係が変わることも多く、占有者が変わった場合でも、その者は、通常は、買受人に対抗することができる権原を有しない差押え後の占有者であり、引渡命令等の手続を採ることにより、その占有者を排除することができます。この場合に、引渡命令の申立てをする際は、競売記録上その占有者に関する情報がないため、買受人ご自身で現場等において確認した、その占有者が権原なく占有しているということがわかる調査報告書等を作成して提出する必要があります。

② 競売物件の所有者と契約を結んでいる賃借人

競売物件の所有者と賃貸借契約を結んでいる建物の賃借人は、契約期間内に建物を使用している場合でも、抵当権等の設定登記前から建物を占有している最先の賃借権者でない限り、その占有権原を買受人に対抗することはできません。

③ 最先の抵当権等に後れる賃借権者

上記で説明したとおり、短期賃借権制度の廃止に伴い、抵当権に後れる賃借権は、その長短にかかわらず、抵当権者及び競売による買受人に対抗することはできません。
ただし、以下の制度には気をつける必要があります。
(経過措置)
改正法施行の際に存在する抵当不動産の賃借権(改正法施行後に更新された者も含む)で、最先の抵当権登記後に対抗要件を備えた民法602条に定める期間を超えない賃借権については、旧民法395条が適用される。

(抵当権者の同意による対抗力の付与)(民法387条)

抵当権の設定の登記後に登記された賃借権(賃借権自体の登記は差押え前にされている必要あり。借地借家法上の対抗要件を備えた賃借権は含まれない。)であっても、この賃借権に優先するすべての抵当権者が同意し、その同意について登記がされたときは、当該抵当権者及び競売における買受人に対抗することができます。ただし、抵当権者が同意をするためには、その抵当権を目的とする権利を有する者及びその他抵当権者の同意によって不利益を受ける者(転抵当権者、抵当権の被担保債権の差押債権者・質権者等)がいる場合は、その者の承諾が必要です。

(明渡猶予制度)(民法395条)

抵当権に対抗することができない賃借権により建物を占有する者でも、競売手続の開始(差押え)前より使用収益をしている者または強制管理もしくは担保不動産収益執行の管理人が競売手続に開始(差押え)後にした賃借権により使用もしくは収益をする者(抵当建物使用者)に対しては、建物の競売によりその所有権が買受人に移転した時から6か月間の明渡猶予期間を与えるものとなっています。
ただし、買受人の買受け時(代金納付による所有権移転の時)より後に、上記の抵当建物所有者に対し、相当の期間を定めて建物使用の対価1か月分以上の支払いを催告し、その相当の期間内に履行がないときは、上記明渡猶予期間の適用はないことになります。

 

その他引き受けになる権利等

①マンションの滞納管理費等の支払義務

区分建物所有であるマンションの管理費等については所有者が滞納をしていた場合、買受人は、所有者の特定承継人として、その滞納管理費等を支払う必要があるため、競売物件購入後、管理組合等から前所有者の滞納管理費等の支払いの請求を受けたときは、その前所有者の滞納管理費等の支払わなければいけません。
物件の所有者の管理費等の滞納がある場合は、物件明細書の「5 その他買受けの参考となる事項」の欄に、 ”「管理費等の滞納あり」” 等と記載されており、通常、売却基準価額もそれを考慮して定められていることが多いです。
また、公開資料にある滞納金額は予想金額でしかないため、代金納付までに金額が増加する可能性が高いと思われます。
そして、前所有者の滞納管理費等を買受人が支払った場合、前所有者にその額を求償して支払いを受けることはできますが、前所有者に対する求償が不可能な場合も多く、実際、前所有者の滞納管理費等は買受人の負担となる可能性があります。

②敷金等の引き受け

抵当権等の設定前に競売物件を賃貸して対抗要件を備えている最先の賃借権者(買受人に対抗することができる占有権原を有する賃借権者)が前所有者に交付した敷金等、賃貸借終了の際に賃借権者に返還すべき金銭がある場合、それは適正な金額の範囲内で買受人に引き継がれることになり、賃貸借終了の際には、買受人が適正敷金額を返還しなければなりません。
賃借権者が交付して敷金については、物件明細書の「3 買受人が負担することとなる他人の権利」の欄に賃借権の敷金としてその額が記載されています。敷金の金額が過大である場合は、例として、3の欄の敷金のところに、「不明(敷金(保証金)○○○万円の主張があるが、過大であるため、適正敷金(保証金)額を考慮して売却基準価額が定められている。)」と記載されています。
→ 返還すべき適正敷金額に争いがある場合、最終的には、賃借権者と買受人との間の訴訟で決着をつける方法したないため、算出した適正敷金額とは異なってくる可能性が高いと思われます。

③買戻し特約について

買戻権は、買戻期間内に権利を行使しないと消滅するので、最先順位の抵当権等の設定登記前の買戻特約の登記がある物件でも、買戻期間内に買戻権の行使がされていないことなどによって、買戻権の消滅が確認することができれば競売による売却に付されることはあります。
しかし、最先順位の抵当権等の設定登記前の買戻特約の登記は、競売による売却により効力を失ったものではないため、競売手続により抹消がされることはなく、抹消するには、買戻権者に依頼する必要があります。買戻権者に依頼し任意で抹消することができない場合には、訴訟等で抹消しなければなりません。
また、買戻期間内でまだ効力がある買戻特約の登記がある物件に関しては、買戻権者から買戻権の不行使の申出等があり、買戻特約の登記の抹消についても買戻権者の協力が得られる物件であれば、競売による売却に付されることがあります。

 

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